亡霊(ゴースト)は夜歩く/はやみねかおる

亡霊(ゴースト)は夜歩く/はやみねかおる亡霊(ゴースト)は夜歩く/はやみねかおる
亜衣・真衣・美衣が通う虹北学園には、4つの伝説がある――「時計塔の鐘が鳴ると、人が死ぬ。」「夕暮れどきの大イチョウは人を喰う。」「校庭の魔法円に人がふる。「幽霊坂に霧がかかると、亡霊がよみがえる。」そしてある日、こわれているはずの時計塔の鐘が鳴りひびき、『亡霊(ゴースト)』事件のはじまりを告げた……。名探偵夢水清志郎事件ノートの第2作。
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主人公の名前が「夢水清志郎」、夢見る清志郎?
登場人物の名前が「中井麗一」、仲井戸麗市?
作者はどう考えてもRCのファンのような気がするという理由だけで、久しぶりの読書。この名探偵夢水清志郎シリーズは、どうやら漫画にもなってるらしく、今はそちらのほうが売れてるっぽい。けっこう前にこのシリーズ第一作を読んだが、そのときには漫画にはなってなかったと思う。
ということで、「亡霊(ゴースト)は夜歩く」。犯人というか亡霊(ゴースト)役がすぐにわかってしまうのがちょっと残念だけど、お話はなかなか面白い。推理小説というより、青春モノ(対象が小学生~中学1年辺りというところがちょっとキツイが)っつう感じで、甘酸っぱい。くすぐったい。

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ

天国はまだ遠く天国はまだ遠く/瀬尾まいこ
自殺志願の千鶴が辿り着いたのは山奥の民宿。そこで思いがけずたくさんの素敵なものに出逢って……。期待の新鋭が清冽な文章で綴る、癒しと再生の物語。
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「卵の緒」をはじめとした瀬尾まいこの他の小説と比べてしまうと、ちょっと・・・てな感じでしたが、悪くはないです。いつもながら、死というヘビーな事象を題材に、読みやすい平易な文章で最後まで飽きさせずに読ませます。
ちょっと・・・と思ってしまったのは、自殺をしようと過疎の地を訪れる主人公が魅力的に感じられなかったからかもしれません。あとは、さらりとし過ぎているかな。もうひとつのひねりが欲しかったという気がします。泣けなかったしなぁ(泣ける小説が良い小説とは必ずしもいえませんが)。
とはいえ、読後感は相変わらず爽やかそのもの。この本に出会えて、読んで良かったと思わせるだけのパワーはあります。

最悪/奥田英朗

最悪最悪/奥田英朗
不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化。 Amazon
群像劇というのでしょうか、まったく接点のない3人がそれぞれ最悪の状況に陥っていき、出会ったときに起こる運命は如何にという小説です。後半に入るまでの各々の状況描写がとにかく丁寧で、延々と長いのですが、描き方がうまいのか読ませます。それがまたほんとに最悪で、わりとBlueな気分になったところで、3人が出会い、あとは一気にジェットコースターです。
正直、最高に面白い!とまでは思わなかったですが、少なくとも、他の作品も読みたくなるほどには面白いです。
解説に映画「パルプ・フィクション」を例えに出していました(たぶん)が、まさに、そんな小説で、読後感も、いったん陥るBlueな気分を吹き飛ばすほどに爽快です。
大阪から帰る際に、売店でたまたま目について手にとった小説でしたが、読んで正解でした。

卵の緒/瀬尾まいこ

卵の緒卵の緒/瀬尾まいこ
捨て子だと思っている小学校4年生の育生、妙ちきりんな母親、そのとぼけたボーイフレンド、不登校の同級生、血の繋がらない親子を軸に、「家族」を軽やかなタッチで描く。坊ちゃん文学賞大賞受賞作に書き下ろし1編を収録。
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文句なく、おもしろいです。表題作の「卵の緒」は、主人公の育生が小学生ということもあって、感情移入することができませんでしたが、帯に書かれている母さんの言葉「誰よりもあなたが好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛してるの。今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ。他に何がいる?それで十分でしょ」、これに尽きます。これだけを読んで、血の繋がらない親子の話というと、暗いイメージが思い浮かびますが、まったくそんなことはなく、コミカルでテンポよく、重たいテーマを軽やかに描いてます。
そして、もう一つの書き下ろしの中編「7’sblood」が泣けました。こちらは、女子高生の「七子」と腹違いの小学生「七生」とのお話。はじめはお互いの距離がつかめずぎくしゃくしていたものの、徐々に親密になっていくのですが、最後には涙の結末が待っていました。もちろん、ただ悲しいのではなく、さわやかですこやかで、抜群の読後感です。
それにしても、瀬尾まいこ、今まで読んだ小説すべてが一貫して「家族」について描かれています。まったく説教くさくなく、押し付けがましくなく、家族の絆の大切さを伝えてきます。そして、何より、小説が面白い。これは、今の時代、特に日本において、とても貴重なことのように思えます。
で、ちょっと気になるのが、すべての小説で主人公に近い存在の人が死んでしまいます。これは、どうかなぁ。「死」はセンセーショナルな事ですが、今度は「死」なくして読ませてくれるものを期待したいなぁ。
20年位前にこの小説を読んでいたら自分はどう思っただろう、ちょっとはましな人間になっていたかもな、なんて。

図書館の神様/瀬尾まいこ

図書館の神様図書館の神様/瀬尾まいこ
アクシデントで夢をあきらめ、傷ついた心を抱え、国語教師としてある高校に赴任したヒロイン清(きよ)。彼女が学校の図書館で出会ったひとりの男の子、垣内君。どこからでも海の見える明るい高校で、瑞々しい物語が始まる…。 Amazon
「幸福な食卓」に続いて「図書館の神様」です。
夢も希望もなく国語教師となった清、楽しみといえば不倫相手とアパートで会っているときだけという、これまた不幸せな設定。その清の心の再生の物語ですが、とことん暗くなりがちな導入から中盤にかけても、かなりコミカルに描いています。決して「軽い」わけではないのですが、読んでいてこちらが沈んでしまうようなことはありません。確かに、瑞々しい。
そして、清をとりまく少年、文芸部のたった一人の部員(部長)の垣内君や弟の拓実がとてもよいです。
「幸福な食卓」ほどの感動はありませんでしたが、読後感の爽やかさでは、こちらのほうが上かも。面白いです。素晴らしい青春小説の書き手に出会えて幸せ。

幸福な食卓/瀬尾まいこ

幸福な食卓幸福な食卓/瀬尾まいこ
「父さんは今日で父さんをやめようと思う」。・・・父さんの衝撃的な一言で始まる本作品は、いま最注目の新鋭作家・瀬尾まいこ氏による4作目となる長編小説であるとともに、主人公・佐和子の中学~高校時代にかけての4編の連作による構成となっています。 佐和子の“少しヘン”な家族(父さんをやめた父さん、家出中なのに料理を持ち寄りにくる母さん、元天才児の兄・直ちゃん)、そして佐和子のボーイフレンド、兄のガールフレンドを中心に、あたたかくて懐かしくてちょっと笑える、それなのに泣けてくる、“優しすぎる”ストーリーが繰り広げられていきます。  Amazon
勝手に、読書の参考にしているサイト椰子の実通信でお勧めしていた「幸福な食卓」を読みました。
Amazonで皆様がレビューされているとおり、とても面白い小説です。壊れかけてる家族のお話で、とてもHappyとはいえない状況なのですが、それぞれが家族ひとりひとりを気にかけてる。家族のカタチなんてそれこそ家族の数ほどありますが、どんなカタチにせよ、お互いを尊重できて、自然に気遣う心があれば、それは幸せなことだと思います。
それにしても、最終話の一大事、小説ではあまりにもありがちな展開とはいえ、というかありがちだからこそ想像できませんでした。そーきたかー。でも泣けます。
家族の幸せとは何ぞやなんて小難しいことを考えずに、青春小説として読まれても、まったくOK。お勧めです。

犬夜叉/高橋留美子

犬夜叉の29巻と30巻を読む。私は、実は、とても涙もろい。が、よもや、犬夜叉で涙がでるとは思わなかった。いやぁ、29巻の心の闇のエピソードはよかった。高橋留美子は漫画界の天才だなぁ。
犬夜叉じゃないけど、「めぞん一刻」は、個人的Best3にはいるまんがです。これまた泣けるんだ。

ゲームの名は誘拐/東野圭吾

ひょんなことから取引先の腕利き副社長の娘を狂言誘拐することに。その娘とのチームワークもよく、見事、3億円を入手することに成功。だが、その娘は、本当に誘拐されているという報道が・・・。
っていう小説です。主人公が嫌な奴、っつうか魅力的な人物がでてこないんで、そういうところがマイナスに感じてしまうのですが、そこは東野、そこそこ面白かったです。映画化されるそうですが、なぜ? ほかに、もっと面白い東野の小説はたくさんあるのに。

グイン・サーガ88巻・89巻/栗本薫、手紙/東野圭吾

そういえば、10日の土曜日に、久々に小説を読んだ。しかも3冊。一日で読んだ冊数では新記録かも。とはいえ、翌日の朝6時まで読んでいたのだが。
グイン・サーガ、栗本薫の代表作だ。どーも、最近の作者のあとがきは読んでいて、へ?と思うことがあるものの、ここまできたら最後まで読み通すだろう。88巻の展開の遅さには辟易したが、89巻になって、今後がちょっと楽しみになってきた。なんだかんだ言われる小説だろうけど、未曾有の小説であることは間違いない。
続いて、東野圭吾の「手紙」。この人の小説は、ここ数年(「秘密」以降)ほんとに面白い。なかでもこの「手紙」はとてもよかった。犯罪者(強盗殺人)の家族の苦しみを描いたもので、テーマとしては、それほど目新しいものではないかもしれない。が、心にすんなり入ってくるんだなー。主人公がどこにでも居るような、ま、平凡な男で、どこにでもあるような社会を、平易な文章で描いている。そこらにある小説より、ずっとリアリティを感じる。展開もよいし、最後は泣きました。泣けるんだ、この人の小説は。お涙頂戴小説じゃないのに。ということで、「手紙」、お薦めです。