センセイの鞄/川上弘美


駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。谷崎潤一郎賞を受賞した名作。
川上弘美の「センセイの鞄」を読みました。とても小説らしい小説で、久しぶりに小説を読んだ(しつこい)という気になりました。面白いです。
川上弘美は数年前から名前だけは知っていましたが、そもそも本をほとんど読まなくなってしまったので今回が初めてです。読みやすい文で、時にユーモラスでもあって、一気にいけます。
「センセイの鞄」、映像化もされた作品でどうやら川上弘美の代表作と言っても良い作品のようです。そんなことも読み終わってから知ったのですが。
読み終わってから、なんだかんだ検索なんかしてみたりしたのですが、「歳の差を超え」というところが一番話題になっていたようです。
私はその「歳の差」というのはそれほど何とも思わなかったです。
それよりツキコさんの心の変遷とでもいうのか、その辺りが面白かったです。
  わたしは、たぶん、いまだにきちんとした「大人」になっていない。
  失敗した。大人は、人を困惑させる言葉を口にしてはいけない。
  しかし、もう言ってしまった。なぜならば、わたしは大人ではないのだから。
  ほんとうに、今まで一人で「楽しく」など生きてきたのだろうか。
それと、確かに「センセイと私の、ゆったりとした日々」を描いているような気がしますが、何気に展開が早いです。キノコ狩に花見、島への旅行などなどテンポよく進んでいきます。そう、リズムが良いのです。それでいて、ひとつひとつのエピソードは短いものから長いものまで自在です。なかには、完全に夢の中というか幻想のようなお話もあったりします。
ということであまり「歳の差」には気にしないまま読んでいたので、最後の唐突な終わり方(と感じました)はちょっとショックだったかな。
何はともあれ、とても面白い小説でした。映像化された作品も今度観てみようと思います。

図書館危機/有川浩


図書館シリーズの第3巻で、現在のところ、最新刊です。
前2巻と比べてちょっとパワーダウンしたかなーという気もしましたが、それなりに面白かったです。
主人公の図書特殊部隊の女性新人隊員、笠原郁の成長を軸に、
1.王子様、卒業
2.昇任試験、来たる
3.ねじれたコトバ
4.里帰り、勃発〜茨城県展警備〜
5.図書館は誰がために〜稲嶺、勇退〜
と続きます。って、目次を書いてもわからんですね。
今回の目玉(?)は3章の「放送禁止用語」でしょうか。けっこう考えさせられます。どんなコトバを使っても時と場合によって差別と感じる方はいるでしょうし、明確に差別の意識をもってコトバを使う方もいるかもしれません。まったく何の意識なく何気なく使った言葉が相手を傷つけていたなんてことも、日常生活にはよくあることです。
ほんと、コトバは難しいと思うのですが、他者を理解するのに一番有効と思われる手段がコトバなんですよね、きっと。だから、あるコトバを使う使わないということではなく、その後の会話、対話で解決するしかない、コトバの問題はコトバでカタつけるのがよいのでは?などと、思います。
あとは、郁が銃で相手を傷付けるところまでメディア良化委員会との攻防が激化しています。まぁ、ちょっとした内戦です。この辺りもスルッと読んじゃうには重いよなぁ。
無抵抗主義が崇高であることは私も認めます。しかしそれを唱えた人自身、これが通用するのは為政者に人道主義が通用する場合だけだと言っておられるはずですな。
特殊部隊の隊長の言葉です。うーん、考えちゃうな。
と、重いテーマも底辺にありながら、基本的には郁を中心に特殊部隊の活躍がおもしろおかしく書かれていて、飽きることがありません。でもって、べたべたな恋愛モノのようなところもあって、「活字でベタ甘とか痒いとかこっ恥ずかしいとか好きなの私だけじゃないよね」と作者があとがきで書いているとおりです。そして、私はこのベタ甘な世界が大好きです。
しかし、あと1巻で終わりとは寂しいなぁ、そもそもあと1巻で話がまとまるのかな?
ということで、第4巻の発売を心待ちにしています。

図書館内乱/有川浩


相も変わらず図書館は四方八方敵だらけ! 山猿ヒロインの両親襲来かと思いきや小さな恋のメロディを 叩き潰さんとする無粋な良化「査問」委員会。迎え撃つ図書館側にも不穏な動きがありやなしや!? どう打って出る行政戦隊図書レンジャー! いろんな意味でやきもき度絶好調の『図書館戦争』シリーズ第2弾、ここに推参!
図書館シリーズ第二弾です。
知らなかったんですが、この本、「2007年本屋大賞」の5位に入ってたりするベストセラーだったんですね。って、この本じゃなくて、本屋大賞は第一弾の「図書館戦争」でした。
ともかく、その図書館戦争の続編です。いやー、面白い。
今回は5つの独立したお話(短編)で、図書特殊部隊のキャラがそれぞれ主人公のような形式です。短編とはいえ、大きなテーマは引き継がれ、物語は時系列に流れていき、最後の章でこれまでのエピソードが一気に収斂されるという私がとっても好きな形でした。
伏線もバリバリですし、スピード感は冴えまくり、笑わされ、泣かされ、突拍子もないお話しながら現実にも通ずるかなりヘビーな問題も真正面から取り上げ、考えさせられるという小説です。今回のヘビーな問題は、一言でいえば、「図書の検閲」ということになるかと思います。
基本的には、今回は、図書館内部の抗争(原則派VS行政派)を軸にしていて、両者の考え方も読んでいて面白いなー、現実にもこういうのありそうだなー(というかホントにあるかも)と思ったのですが、「図書館抗争、検閲抗争は、正確には国家機関であるメディア良化委員会による検閲を、(地方自治体が)政府の地方行政への過介入として拒否し、そのために広域地方行政機関である図書隊の武力を活用している」という図式(「国」対「地方」ですね)もなかなか興味深いところでした。
さらに、前作に引き続き、今回もとても印象深い台詞がありました。
「検閲を肯定するメディア良化法を擁護する図書であっても、図書館の蔵書であるからには他の図書と同様に守るべき」
と、こんなちょっと固いところはホントはどうでもよいのです。
図書特殊部隊の連中(プラス1名)の活躍がともかく痛快で、とにかく面白い。キャラが立つとはこのことだよなー。
前作のあとがきで「月9のドラマ」云々と作者が書いてましたが、これ映像化しても面白いと思うなー。突拍子もないお話(銃器とかたくさん出てくるし)なので、だからこそ、大金をかけて、リアルに映像化してほしい。きっと、ヒットすると思います。
ということで、かなりおすすめです。

図書館戦争/有川浩

図書館戦争図書館戦争/有川浩
公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館!狩られる本を、明日を守れ!
敵は合法国家機関。相手にとって不足なし。
正義の味方、図書館を駆ける!

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ライトノベルっつうのは、こういう小説をいうのでしょうか。
作者があとがきで、「今回のコンセプトは、月9連ドラ風で一発GO!」と書き出しているとおり、ラブコメ(死語じゃないだろな)風味で、はちゃめちゃ破天荒なお話がぐいぐいと進んで、笑いながらがんがん読めました。面白かったです。
舞台は近未来(かな?)の図書館。
『メディア良化法』に基づく検閲を目的としたメデイア良化委員会と、武装した図書館との攻防を、図書特殊部隊の初の女性隊員「笠原郁」を中心に、郁の教官や同僚などが絡み合ってお話が進んでいきます。攻防といっても、ほとんど戦争です。
こう書いてみるとかなり物騒ですが、郁をはじめ、鬼教官や同期の友達とのやり取りが生き生きとしていて面白いんですね。それぞれキャラが立っていて、ほんと笑えます。
そして、笑うだけでもなく、テーマとしてはけっこう重いんですよね。
冒頭に「図書館の自由に関する宣言」が掲載されていて、その項目が目次になっています。
図書館の自由に関する宣言
1 図書館は資料収集の自由を有する。
2 図書館は資料提供の自由を有する。
3 図書館は利用者の秘密を守る。
4 図書館はすべての(不当な)検閲に反対する。
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
この「図書館の自由に関する宣言」ってほんとうにあるようで、1979年に日本図書館協会総会決議されたらしい。作者はこの宣言の4に(不当な)という言葉を加えてるようです。
そういえば、私が数か月前にいった図書館にもこんな文言が書かれたプレートが掲げてあったような気がします。
なんかかっこいーです。
社会が不穏な方向に向かおうとしているとき、自由の最後の砦となるのは図書館かもしれないなーなんて思ってしまいました。「本を焼く国ではいずれ人を焼く」という言葉も印象的です(作者の言葉じゃないようですが)。
ま、そんなちょっと難しいことは考えなくても、十分、面白い小説でした。
こういう荒唐無稽でちゃんと最後には話が収束する小説って好きだなー。
ということで、おすすめです。

冥王星パーティ/平山瑞穂

冥王星パーティ/平山瑞穂冥王星パーティ/平山瑞穂
なんで私はいつも「男」で間違っちゃうんだろう?
今日の私は、過去の私の集大成。だから。今の自分が嫌いなら、ちょっとでも変わらなきゃ、未来の自分を好きになることは出来ないんだよね。様々な人生の分岐点のどれが私をここに導いたのかは分からないけれど、この瞬間に選ぶ道は間違っていないと信じたい――迷走する恋愛の果てに待つひとすじの光を予感させる青春小説。

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面白かったです。
平日だというのに、久しぶりに深夜3時までかかって読み通してしまいました。
主人公の女性は、「そこそこ美人。要領もいいし、性格だって悪くない。」のに、男で散々失敗を繰り返してる。その彼女の失敗のお話が一話完結のような形で3話収められていて、最初のお話が最後のエピローグに収斂していく、そんな感じの小説でした。
登場人物は、なんというか、羨ましくなるような「いい人」はでてきません。
でも、なんだか切なくなるというか、お話に引き込まれてしまいます。
どちらかといえば、重たい内容なのですが、文章がこなれてるのかな、ぐいぐい読むことができます。終始冷めた視線でありながら、一直線というか。
何書いてんだかわからなくなってきましたが、帯に書かれている「透明に深く輝く青春」というのがぴったりかなーという気がします。
なんで私は今ここに居るんだろう、どこかで道を間違えたんじゃないか、間違えたのはいつ?
なんてことを思ってしまう人は、ずっぽりはまってしまう小説だと思います。
そう、私はこの小説に思いっきりはまってしまった一人です。
「冥王星パーティ」というタイトルも、最後のお話で納得。
あー、どこかで道を間違えたと思ってる人がはまるとか書いてしまいましたが、どろどろと落ちていくようなお話ではありません。たとえていうなら、SIONの「通報されるくらいに」でしょうか。
  あわてんなよ 雨が上がったからって いきなり晴れるわけもないさ
  俺はまだ やっと今 始まったばかりだろ
  早くはない 遅くはない 始めたら始まりさ
  何度でも 何度目でも 始めたら始まりさ
雰囲気はまったく違うんですが、こうして歌詞を書いてみると、空気は似てるような気がします。
ということで、これまたおすすめの小説です。

ハサミ男/殊能将之

ハサミ男ハサミ男/殊能将之
連続美少女殺人事件。死体ののどに突き立てられたハサミ。その残虐性から「ハサミ男」と名づけられたシリアル・キラーが、自分の犯行を真似た第三の殺人の真犯人を捜す羽目に…。殺人願望と自殺願望という狂気の狭間から、冷徹な眼で、人の心の闇を抉るハサミ男。端麗なる謎!ミステリ界に妖しい涼風が!第13 回メフィスト賞受賞作。
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先日、映画を観て、昔読んだ原作を読み返したくなりました。
ということで、7年ぶりくらいに再読、「ハサミ男」。
いやー、おもしろい。本格ミステリとはこーいうのをいうんだろうなー。
あらすじはとっくに忘れていたので、綺麗に騙されました。
映画を観たばかりだというのに、映画は原作をわりと忠実に(これはあとで気付いた)描いていたというのに、謎解きの幕が落とされる
「きみがハサミ男だったんだね」
の台詞からの展開は、え!え?え~!?てな感じで、ほんと、頭がぐらぐらしました。
映画は原作をわりと忠実に、と書きましたが、映画のほうは、小説における二重、三重に張り巡らされたトリックをちょっと落としてました。それでもこのトリックを完璧に映画化するのは無理だよな~、というか、よく映像化できたなぁ、しかも映画としても面白くと、いまさらながら感心。
映画の感想でも書きましたが、ハサミ男が「なぜ殺人を繰り返すのか」といったところはあまり掘り下げられていません。が、小説ではそれほど気にならなかったです。
そんなことより、謎解きの面白さ、爽快な騙され感が気持ちいい。
そういえば、作者がロック好きなのか、XTCの歌詞が登場したり、バイク便の会社名が「スピード・キング」(Deep Purple)だったりして、その辺りも楽しめました。
また、決して軽いお話ではないんですが、ひねくれたユーモアというか、小技の効いたパロディが随所にあって、読みやすいところもよかったかな。
ということで、ちょっと前の小説ですが、おすすめです。

ブンとフン/井上ひさし

ブンとフン/井上ひさし
ブンとフン/井上ひさし
フン先生が書いた小説の主人公、神出鬼没の大泥棒ブンが小説から飛び出した。奔放な空想奇想が痛烈な諷刺と哄笑を生む処女長編。
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「ブンとフン」、たぶん、中学生(もしかしたら小学生)のときに初めて読んで、衝撃を受けました。いや、作者でさえ、あとがきで「馬鹿馬鹿しいということについては、この小説を抜くものが出ていない」といってるくらい、ばかばかしいナンセンス小説なので、衝撃とはちょっと大袈裟なような気もする。だが、そーだなぁ、少なくとも5年以上は、この小説が私のなかのベストだったのだ。
で、たぶん、20年以上ぶりにあらためて読んでみると、やっぱり、原点なんだよなぁ。作者の、じゃなくて、私の、なんつうか、大袈裟に言えば、思想の。
なにしろ、ぶっ飛んでる。でもって、世の中のあらゆる権力、権威に対する痛烈な挑戦。いや、違うな、権力をバカにして、おちょくって、笑い飛ばしてる。笑い飛ばしてるだけだから、デモとかそんな方向には行かないし、もちろん、過激派やテロリストなんてつまらない「反権力という権力」にも振られない。
この小説を読んで、たぶん、物の見方が変わった。というか、潜在的に持っていた見方が増幅された。良いか悪いかはわからない。
さて、なんだか似てないか。
そう、清志郎のスタンスにとっても似てるのだ。井上ひさしと清志郎が繋がるとは、考えたこともなかった。新たな発見だ。「ブンとフン」に感動した私は、その後、井上ひさしの小説(当時、発表されてたもの)をほとんど読んだ。清志郎に出会うのは、たぶん、そのちょっと後、若しくは同時期だ。清志郎に夢中になるのも無理はない。
さらに、井上ひさしの書く詩(「ブンとフン」はミュージカルっぽい側面もあってちょこちょこと歌が書かれている)が、これまた清志郎のニオイがする。例えば、こんな感じ。清志郎の曲だと言われても、思いっきり納得しちゃう。
  ただ好きなのさ
  つまるところ そういうことなのさ
  理屈はいらない
  ただ好きなのさ
  ただそれだけのことなのさ
ということで、なんだか突然の自分探しというか、そんな感じのした「ブンとフン」再読でした。
残念だったのは、ここに書かれているくだらないギャグが、あまり面白く感じられなかったこと。以前は、爆笑してたはずなのになぁ。やっぱり、つまらない大人に確実になっているような、そんな気がしてしまいました。

容疑者Xの献身/東野圭吾

容疑者Xの献身容疑者Xの献身/東野圭吾
数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか

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超久しぶりに小説を読みました。1年以上ぶりかも。
「容疑者Xの献身」、東野圭吾はこの小説で直木賞を受賞したんじゃなかったっけ?
冒頭で男が殺されます。犯人は、その男の離婚した妻と中学生の娘。彼女達の隣に住んでいる中年の天才数学者が、その殺人を完全に隠しとおすことを決意。大学の同級生である天才物理学者がその謎に挑む。てなお話です。
犯人は最初からわかっていて、完全犯罪が成立するのか、警察と物理学者は真実にたどり着けるのか。はらはらどきどきの推理小説。
推理小説としてトリックが面白い。お話も流れるように進みます。いたるところに伏線が張ってあって、それが最後に結集、大団円を迎えるときには、驚きとともに、感動です。おー、こうきたか~という感じです。
トリックだけではなく、数学者と犯人の女性との微妙な関係や心の動きがうまく描かれていて、最後にはちょっとだけ泣けます。
さらに、数学と物理の対決という側面もあって、なかなか興味深いです。
ということで、とっても面白い小説でした。さすが、東野圭吾。
でも、「東野圭吾さんの小説」というところでは、「秘密」とか「トキオ」、「手紙」、「白夜行」なんかのほうが好きかな~。
犯人の一人である中学生が、ちょっとだけ重要な役回りなんだけど、ほとんど描かれてないんだよなぁ。この小説のサイド・ストーリーという位置付けで、彼女を中心に描いても面白い本になりそうな気がします。

2005年 本

気付いたら、2005年もあと6日。ということで、唐突にこの1年を振り返ります。
まずは本。今年は、さっぱり本を読まなかったような気がします。読んだ本はここに感想を書いているはずなので、カテゴリーを見返してみると、7冊だけ。
それでも、瀬尾まいこに出会えたのは幸せだったと思います。彼女の小説は、軽い文体で読みやすいのですが、死をテーマとしていることが多く、考えされられるとともに泣けます。まだ買ったまま読んでいない小説が2つあるので、それも近いうちになんとか読もう。
あとは、これまた買ったまま読んでいない多くの小説のなかで、荻原浩。3年位前にファンになって、その頃出版されていたものは全部読んだはずなのですが、知らないうちに、かなりの数の小説が発表されていました。3年前と比べてもずいぶんメジャーになった感があります。これも近いうちに読もう。
で、7冊のなかからベストを選んでも、まったく意味がないと思いますが、とりあえず、「卵の緒/瀬尾まいこ」を推します。そのなかでも「7’sblood」が最高でした。

日暮らし/宮部みゆき

日暮らし/宮部みゆき日暮らし/宮部みゆき
待望の最新時代小説、たっぷり上下巻で登場。多くの者の運命を大きく変えた女・葵が殺された。殺したのはーー本当にあいつなのか?ぼんくら同心・平四郎、超美形少年・弓之助が、ついに湊屋の真実に迫る!
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久しぶりに長編を読みました。「日暮らし」は、宮部みゆきの「ぼんくら」の続編といってもよい時代小説です。というか、「ぼんくら」を読んでいないと面白みも半減、私はすっかり「ぼんくら」のお話を忘れてたので、傍らに置いて、斜め読みしつつこの「日暮らし」を読みました。
それにしても、面白い。お話の進め方といい、それぞれのキャラクターが小説のなかで自由奔放に描かれているのはさすがです。短編が2つ、3つあって、それが本編に繋がり、最後は収まるところに収まる、まさに大団円という推理小説としてもお手本のような感じ。
犯人の殺人の動機がちょっと弱いような気がして、そこが残念といえば残念。だけど、読後感は爽やかだし、なんていうか、押し付けがましくない前向きさ、ひたむきさというのは読んでいてキモチがいーです。