堕落論/坂口安吾


堕落論/坂口安吾(Amazon)
最近ハマってる坂口安吾。
チョー有名な「堕落論」を読みました。
これは小説ではありませんが、これまた非常に面白かったです。
好きだなー。この考え方。
Amazonではこんな風に紹介してます。
昭和初期に活躍した「無頼派」の代表的作家である坂口安吾の評論。初出は「新潮」[1946(昭和21)年]。「日本文化史観」や「教祖の文学」と並ぶ、安吾の代表的評論。「半年のうちに世相は変った」という有名な書き出しを枕に、戦後直後の日本人が自らの本質をかえりみるためには、「堕落」こそが必要だ、と説いたことで世間を賑わせた。現在も賛否両論を集める、過激な評論作品。
賛否両論あるってのがちょっと意外だけど、過激は過激なのかなー。
天皇のことも書いてるしな。
いろんなことを自由に書いてるような感じはあるかも。
堕落論といっても、なんていうかな、例えばアヘンでヘラヘラってな感じでもなく。
って、ちょっと古過ぎか。
完全完璧なもの、人などなく、だからこそ面白い。
そんな風に読めました。
Amazonのレビューだったかな、坂口安吾は「生」にベクトルが向いてる。
「生きろ」
ってな表現が腑に落ちました。
妙な精神論とは全く違って、とにかく、自由。
好きだなー。
またここで出してしまうのも、憚られる気がしないでもないんですが、清志郎が、太宰治ではなく坂口安吾を語ってることが多いのも頷けます。
徹底的にリアル、な気もするし。
時代を超えてるような気もするから、今読んでも、ぜんぜん古臭さを感じないし。
ということで、素晴らしいです、坂口安吾!

桜の森の満開の下/坂口安吾


桜の森の満開の下/坂口安吾(Amazon)
坂口安吾の短編小説「桜の森の満開の下」を読みました。
「夜長姫と耳男」を読んでから、ちょっと、ハマってます。坂口安吾。
「桜の森の満開の下」、Amazonの内容紹介ではこんな風に書かれてます。
昭和初期に活躍した「無頼派」の代表的作家である坂口安吾の小説。初出は「肉体」[1947(昭和22)年]。通る人々が皆「気が変になる」鈴鹿峠の桜の森。その秘密を探ろうとする荒ぶる山賊は、ある日美しい女と出会い無理やり妻とする。しかし、それが恐ろしくも哀しい顛末の始まりだった。奥野建男から「生涯に数少なくしか創造し得ぬ作品の一つ」と激賞された、安吾の代表的小説作品。
うーむ。
なんとなく、違和感を感じるような内容紹介。
それはともかく。
これまた面白い小説でした。
なんというか、この時代の小説、ま、昔の小説って読みづらいって印象があってなかなか手に取ることがなかったんですが、坂口安吾は読みやすいです。
でもって。
とにかく、斬新。なような気がします。
ストーリーにわくわくするようなところがあるかといえば、そうじゃないかも、です。
だがしかし。
題材も、展開も、斬新なような気がするんだなー。
いや、斬新かどうかはともかく、とにかく読んでて面白い。
「桜の森の満開の下」ってタイトルから、ちょっとロマンチックというか、そんな勘違いをしてもおかしくないような。
ところが、とんでもない。
恐ろしいというか、怖い。
桜のもつイメージ。
確かに、この小説が描くような感覚もあるかも。
でも、なかなかここまで徹底して書けないんじゃないかなーって気がします。
なんというか、ぶっ飛んでる。
イカれてます。
そこが、いい。
本来、小説ってこういう破壊力を持ってるんじゃないかなーって思いがよみがえるような。
抽象的なことばかり書いてますが、短編だし、すぐに読めます。
「夜長姫と耳男」もよかったけど、これもまたいいなー。
オススメ。

夜長姫と耳男/坂口安吾

チョー久しぶりに本を読み終わりました。
読み終わったといっても、青空文庫の短編ですが。
坂口安吾の「夜長姫と耳男」。
ひょんなことからこの物語を知ったのですが、非常に読みやすく、小説らしい小説でした。
私は小説に疎いので、なんともなんとも、なんですが、ジャンルがあるとすれば幻想小説、かな。
ジャンルはどうでもいいか。
舞台は戦国時代、なのかなー。
匠である若き青年、耳男が、長者なのかなーの夜長姫のために仏像かなーを彫り続けるお話。
であってるかな。
耳を切り落とすとか、少々、凄惨な場面もあります。
が、流れてる空気は妙に気高い、というか、崇高というか。
俗世間からかけ離れて、動機がどうであれ、姫のために彫り続ける耳男。
動機がどうであれ、ものすごく一途です。
物語は、登場人物がだんだん減っていきます。
あとから気づいたんですが、この辺、すごく巧妙だなーって思いました。
疫病が流行って、村人もどんどん死んでいくし。
推理小説じゃないんですが、「そして誰もいなくなった」を思いだしたり。
ぜんぜん関係ないですけど。
淡々としながらも、ある意味、異常で不穏な緊張が徐々に高まって、クライマックスに。
「チャチな人間世界」という言葉が出てきます。
芸術といっていいのかな、を創りだす者がもつべき決意、を描いたものといえるのかもしれません。
今、思い出したけど、清志郎がわかりやすいロックンロールを作り始めたとき、下界に降りてきてやったぜ、みたいなことを思ったというようなことを言っていたような。
言葉は違うかも、だけど、ニュアンスはそんなことを言ってました。
まさに、チャチな人間世界に。
とはいえ、そのチャチな人間世界に広く受け入れられるのは、下界に降りたから、なんですけどね。
私は、その方向のほうが好きです。どちらかと言えば。
あ、ずれた。
夜長姫と耳男。
そんな御託はともかくとして、面白いです。
姫と耳男の恋愛、純愛、それも究極的な、って感じでも読めますし。
映像化しても面白そうだけどなー。
いや、すでにされてるのかもしれないけど。
というお話でしたが、短編だから、一冊の本を読んだとまでは言えないかもなー。
私は青空文庫で読んじゃいましたが、文庫本では「桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)」に収録されているようです。

桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫) (Amazon)

海街diary 4 帰れない ふたり/吉田秋生


8月に発売された「海街diary 4 帰れない ふたり」をようやく読みました。
吉田秋生、おもしろいなー。
今、続き物の漫画で読んでるのって、この「海街diary」だけなんだけど、どうだろう、他の漫画でもこのくらい読ませるものがあるのかな。
連載が不定期なのかな、少なくとも毎週じゃないってこともあるのか、とにかく描写が丁寧です。
今回は中学生の淡い恋って感じのお話が軸になっていたかな。
でも、もちろん、それだけじゃなくて。
むしろ、周辺で語られるエピソードがよくて。
「人の気持ちなんてそう簡単にわかるもんじゃないよなあ」
何気ないこの台詞が、全編通じてテーマになってる印象があります。
わからないからわかろうとするし、時にはわからないままでもいいんだよ。
って感じでしょうか。
ともかく。
中学生、いいなー。
振り返れば、もっとぐちゃぐちゃしてるんじゃない?って気がしないでもないけど、いいなー。
中学生に戻りたい、もう一度やりたいって方はあまりいなさそうだけど、私は戻れるなら中学生からがいいな。
恥ずかしくて死にそうって感じがいいじゃないか。
いや、今、振り返るから恥ずかしいだけで、本人達はいたって真面目、というか、本気だし。
たぶん。
なにしろ、中学のときに見聞きしたものが、今の自分の根幹になってると思うしなー。
もう一度、今、戻ったら、やっぱり、清志郎に夢中になるんだろうか。
たぶん、夢中になると思う。
なんかそんな気がする。
って、大幅にズレました。
海街diaryだ。
1年に1冊くらいのペースで刊行してくれると嬉しい。
次作も楽しみです。

モテキ/久保ミツロウ


恋にドヘタレな草食系男子、藤本幸世(29)にモテ期襲来!! 猛禽系、処女系、ミステリアス系と、ありとあらゆる女性たちが幸世に猛接近。だが「俺は男として出来損ない」と自信のない幸世は敵前逃亡!?
しかし更なるモテ期の猛襲が彼を追う――。果てして幸世の運命やいかに!?
(Amazon)
そういえば、一月以上前、マンガの「モテキ」を読みました。
これも電子書籍で購入してみました。
まずは、感想ですが、おもしろい。
おもしろかったなー。
そして、なんというか、イタイというか、けっこう落ち込むというか。
おもしろいのは、適度なギャグとか節々にみられるオタク的な要素とか、あるいはフジロックが描写されてるとか。
登場人物の心の動きも丁寧な気がします。
テンポもいいし、全4巻なんですが、ラストはその後の展開を読者の想像に任せるカタチってのもよかった。
ちょっとゴチャゴチャしてるかなーって気もするけど。
詰め込みすぎというか。
イタイ、ってのは、主人公のダメダメさが自分に被るという。
よくありがちですが。
ダメダメ描写がリアルなんだろうなー。
なもんで、面白くて、けっこう笑ったりしつつも、あとでズドーンとくるという。
作者の久保ミツロウさん、女性なんですよね。
読み終わってから知ったんですが、ビックリしました。
ともあれ。
笑えるだけじゃなくて、落ちこむこともできるという、稀有なマンガです。
私だけかな。
いや、そんなことないと思うな。
24時間自信満々、なんでもできるぜ、どんとこい!なんて人はいないでしょうから。
自分の中の75%以上は体育系、熱血だぜ〜という方以外はおもしろいって思うんじゃないかなー。
と、テキトウに考えたりします。
ともあれ。
好きだなー、この世界。
そうそう。
マンガの電子書籍。
iPhoneで読むのは、小説とは違って、相当キツかったです。
細かい字が読めなかったりするので、その都度、画像を広げたりして。
が、iPadではいい感じでした。
ま、単行本よりも若干サイズが大きいくらいだから、当たり前かもしれないけど。
できれば、本の類は全部電子化してほしいなーと思ってます。

神様のカルテ/夏川草介


神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる。夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中。読んだ人すべての心を温かくする、新たなベストセラー。第十回小学館文庫小説賞受賞。 (Amazon)
「神様のカルテ」を読みました。
映画化もされたこともあって、なんとなく存在は知っていたものの、すごく読みたい!ってほどでもなくて、そのままになっていた本です。
で、最近、というか、この数か月(にもなるか!)、iPhoneで電子書籍を読むというのに、ちょっとハマっていて、電子化された本を探している時に引っかかった、という感じでした。
なかなか面白かったです。読み終わるのに一か月以上かかっちゃったけど。
主人公の若いお医者さんが飄々としていて、独特の雰囲気でした。
映画では宮崎あおいが出演していることもあって、恋愛モノっぽいのかなーと漠然と思っていましたが、違ってました。
若いお医者さんがあくまでもメイン、ですね。
きっと誰もが、ここでぐぐぐっときて、って場面があります。
私もきましたねー。
電車の中であぶなく涙落とすトコでした。
涙もろい私、とはいえ、あの場面はぐぐぐっときます。
ちょっとサラっとした感じもありますが、いいお話だなーと思います。
読みやすいし。
ということで、面白かったです。

阪急電車/有川浩


隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。(Amazon)
またまた小説を読んでしまいました。
「図書館戦争」で好きになった有川浩の「阪急電車」。
今年の春頃、映画も公開されてなかったっけ。
観ようかな〜と思ってたんですが、すでに9月。
で、阪急電車。
小さな路線、なんでしょうか、一駅ごとの短編が少しずつ交錯してって構成です。
こういうオムニバスな話、好きだな。
おもしろいです。
読みやすいし、いい意味で軽いし。
軽いといっても、なんだろう、まっとうな生き方を描いてるというか。
読後感もよいです。
だがしかし。
図書館戦争のときから、ちょっと気になってたんですが、どうも登場人物の視点、視線が自分と合わないような気がして。
作者の視線、表現の仕方、といってもいいんですが。
肌に合わないっていうか。
おもしろいんだけどな。
そんな風に思っちゃうこと自体がおもしろいような気もするけど。
うーむ、この違和感はなんなんだ。

プリンセス・トヨトミ/万城目学


このことは誰も知らない―四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。秘密の扉が開くとき、大阪が全停止する!?万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。特別エッセイ「なんだ坂、こんな坂、ときどき大阪」も巻末収録。 (Amazon)
超久々に長編小説を読みました。
10日くらいかかっちゃったかなー。
今回は、長編では初のiPhoneによる電子書籍です。
で、「プリンセス・トヨトミ」。鴨川ホルモーの万城目学です。
お話は、大阪国を巡る攻防、でしょうか、ひとことで言うと。
荒唐無稽な小説です。
でも、よかったなー。
面白かったです。
キャラが立ってるっていうんでしょうか。
登場人物が生き生きしていて、荒唐無稽なファンタジーな展開もなんだかホントにあったらいいなーと思うような。
大阪のプライド、というか、東あるいはお上に対するスタンスもオモシロイし。
まったく関係ないんですが、井上ひさし「ブンとフン」の国民すべて泥棒化?が頭によぎりました。
とはいえ。
ちょっと期待しすぎたかな、肩透かし食らったかなって感じもありました。
この奇妙な設定は、この先、どっかで生きてくるんだろうなーと思ったら、それほどの伏線でもなかったり。
あるいは、展開がなんとなく読めちゃったかなというか。
いや、なるほどーと思うところも多々あるんですけど。
Amazonのカスタマーレビューに「ちょっと気合い入りすぎ」って表現を見つけたんですが、確かに、そんな印象あるかも、です。
だがしかし。
単純に面白い、かな、やっぱり。
会計検査院のメンバーは魅力的だし、彼らを主人公にした物語を書いてくれたら、また読みたいと思うし。
今度は、映画化された「プリンセス・トヨトミ」を観てみたいなーと思います。

藪の中 ほか


先日のROCKS TOKYO。
あまりに電車に乗ってる時間が長かったので、青空文庫で芥川龍之介の短編を読んだ。
超久しぶりの読書。
読んだのは「藪の中」、「蜘蛛の糸」、「羅生門」の3編。
短いということもあるけど、とっても読みやすい。
全部、再読のはず、だけど、やっぱり面白い。
3編どれもに言えるような気がするけど、倫理でいいのかな、善悪の判断を読み手に委ねてる。
これがいい。
勧善懲悪じゃないとこがいい。
それとファンタジーなところもいい。
【リアルなんてファンタジーだと思っちゃうんだ】
多少、強引な気もするけど、ま、こんな感じ。
いや、強引じゃないな。
芥川龍之介と長澤知之の世界は通じるものがあると思うよ。
という、芥川龍之介の短編小説。
彼の他の作品はもちろん、黒澤映画の「羅生門」がまた観たくなった。
とっても好きな映画。
今度、観よう。

告白/湊かなえ

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。(Amazon)
超久々に小説を読みました。
湊かなえの「告白」。
面白かったです。すごく。
救いがないとか、重たい、クライ、そんな感想もどこかで見たような気もします。
確かに、そんな感じ。
それでも、プロットがいいんでしょうか。
テンポがいいのか、グイグイ読めます。
とはいえ、私が面白い!と思えたのは、映画の「告白」を観ていたから、なおさらかもしれません。
今でも、小説よりも、映画のほうが面白かったと思ってます。
ほぼ原作を忠実に映画化していますし、私が思うところの、この小説のキモを中心に据えているように感じました。
キモっていうと大げさですが、救いがないようであるのかな、と思わせるところでしょうか。
特に、ラストの場面。
松たか子扮する元教師の究極的な復讐。
さらに、その復讐の顛末を語る際の諭すような台詞。
そして最後の台詞 「なーんてね」
実行犯の生徒の行動も、生徒たちの凄惨なイジメも、元教師の復讐も、この一言で全てが吹っ飛びました。
メガトン級(って言う?)の衝撃でした、この4文字は。
救いがあるのか、ないのか。
全ては藪の中。
ホントに彼女が復讐を実行したのかさえわからない。
生徒を諭すあるいは許すキモチがあったのかわからない。
その判断は完全に観客に委ねられています。
この作りが、構成がすごく面白く感じました。
小説には「なーんてね」という台詞はありません。
何気に、この台詞がないってだけで、映画のほうが面白いといえるような気がします。
松たか子の演技もホントに素晴らしいし。
嬉しいことに、と言っていいのか、「告白」を撮った中島監督もインタビューで「最終的になんの救いも解決も示すことなくバサっと終わらせているところがおもしろい」と語っていました。
さらには、「彼らが真実を話しているという保証なんかどこにもない。決定的なことをまったく書いていない」とも。
このことは小説よりも映画の方がわかりやすく、描かれていたと思います。
だからこそ、映画のほうが面白いと感じたのかもしれません。
と、映画の感想になってしまいましたが、小説も、もちろん、面白いのです。