大いなる助走/筒井康隆


大いなる助走/筒井康隆(Amazon)
筒井康隆の小説「大いなる助走」を読みました。
高校くらいのときかなー、一度、読んだかと思います。
その時以来、およそ30年ぶり。
斬新です。
高校の時よりも、いまのほうが、なんとなくその凄さが伝わってくるというか。
そんな気がします。
筒井康隆というと、狂気、って表現されてたような。
いまは違うのかな。
その、狂気って言葉がぴったり。
文壇、その周りの有象無象。
デフォルメしてるのか、してないのか、わかりませんが、ともかく狂気が疾走してます。
なんというか、別の言葉で言えば、オルタナティブって気がするな〜。
それでいて、完璧、エンターテイメント。
単純に読んでいて面白い。
読むのがまったく苦痛じゃない。
ちょっと強烈過ぎて、苦痛に感じる人がいるかもしれない、でも、たぶん殆どの人が大丈夫。
そのギリギリ感も素晴らしい。
なにげに、このところ筒井康隆を立て続けに読んでいるのですが、疾走感でいえば、この「大いなる助走」が一番かもな〜。
ドロドロしてるんですが。
いや、ドロドロの極地なんですが。
ともかくすごい小説でした。

僕だけがいない街 (7)/三部けい


僕だけがいない街(7) (Amazon)
「僕だけがいない街」の7巻を読みました。
今回は、前回のなんというか、物語の一つのクライマックスの後処理というか、後処理は言葉が悪いな〜。
クライマックスを整理して、前半のお話とのリンクを明らかにてな感じでした。
Amazonの評価では、いまのところ、いまひとつですが、私はけっこう面白いと思ったな〜。
確かに、ちょっと息抜きてな感じもありますが、これからまた違った展開が始まる予感。
いい感じのインターミッションと思います。
そろそろ終盤かな。
次の巻も楽しみです。

累(1)〜(3)/松浦だるま


累(1)〜(3)/松浦だるま(Amazon)
二目と見れぬ醜悪な容貌を持つ少女・累。その醜さ故、過酷な道を歩む累に、母が残した一本の口紅。その口紅の力が、虐げられて生きてきた、累の全てを変えていく――。(Amazon)
累という漫画を読みました。
松浦だるま、新人の方のようです。
ぜんぜん知らなかったんですが、おもしろかった。
1巻は、「醜悪な容貌」ってだけで人格から何からすべて否定されるような展開にかなり違和感を覚え、うむーってな印象でした。
現実にはそういう場面も多々あるのかもしれませんが、それを正面から肯定されるようなのはどーかなーってな気分。
が、2巻、3巻と進むにつれ、そのようなことはどうでもよくって、物語の展開に夢中。
かなりぶっ飛んでるストーリーですが、それがおもしろい。
演劇とか舞台についてもっと興味があれば、もっとおもしろく感じられるように思います。
虚構から真実に近づいていく、みたいな。いや、これはかなり大げさか。
ともあれ展開がおもしろくて、次巻以降も楽しみな漫画です。

僕だけがいない街 (4)/三部けい


僕だけがいない街 (4)(Amazon)
逮捕された瞬間、悟に【再上映】が起きる! その結果、再度1988年へと舞い戻ることに。今度こそ失敗しない、雛月を救う! 強く誓う悟であったが、戻った先で見たもの…それは同級生・ケンヤの冷たい眼差しで! ?
「僕だけがいない街」の4巻です。
3月くらいにひょんなことから知った漫画、Amazonのセールか何かだったかなー、なんですが、おもしろいです。
サスペンスものになるのかなー。
物語では、【再上映】、リバイバルと読んでる、ふとした拍子にやってくるタイムトラベル?で過去に戻ったり、現代に戻ったり。
3巻が、絶望的な瞬間でのエンディング、それが、今回は再々度だったか、の過去に戻ってからのお話。
今回は、ひとつのエピソードが無事に解決したって感じでしょうか。
そうそう、主人公が、なよなよしてるというか、篭りがちだったっけかな。
そんな主人公が、物語が進むにつれて、成長していくような、そんな感じもあります。
ともかく。
4巻では、ようやく、ひとつの物語が一応のハッピーエンドで完結。たぶん。
これが現代にどう影響するのか。
完結といっても、この時代にもよくわからない点がたくさんあったり。
まだまだ謎はたくさん残ってます。
これらをどう収斂させるのか。
うまいこと、パズルが全部ハマるようなエンディングを期待してるんだけどな。
まだまだ当分先かな。
続きが楽しみな漫画です。
おもしろいよ。

海街diary 6/吉田秋生


海街diary 6 四月になれば彼女は(Amazon)
吉田秋生の「海街diary 6」を読みました。
来年の映画化も決まったらしい海街diary。
今回の巻もすごくよかったです。
4月になれば彼女は。
副題ですけど、凝縮されてるな〜。って感じ。
中学生を中心にした物語。
どこにでもあるようなお話をざっくり切り取って、自然に展開するような。
行間というか何というか、間がいいんだよなー。
なんだかんだでもう6巻。
ラストに向かって、ってな雰囲気も漂って。
次巻も楽しみです。

火の鳥 1 黎明編/手塚治虫


火の鳥 1 黎明編 (Amazon)
舞台は3世紀の日本。ヤマタイ国の女王・ヒミコは永遠の命を得るためにクマソ国に攻め込み、火の鳥の生血を手に入れるよう命じた。生き残ったクマソの少年・ナギはヤマタイ国の猿田彦の捕虜になり、ヤマタイ国に連れてこられた。しかし、ヤマタイ国は、ニニギに率いられた渡来人の高天原族の攻撃を受けようとしていた。永遠の生命の物語を明日へ―。生と死を巡る壮大な人間ドラマが開幕する。(Amazon)
火の鳥、黎明編を読みました。
ようやく、って感じですが、なにげに私は手塚治虫はほとんど読んだことないんだよなー。
なんでだろって気もしますが、そもそもそれほど本とか読まないしな。
って、火の鳥、です。
名作名作と呼ばれていることは知ってます。
で、たしかに。
これはおもしろい。すばらしいです。
1967年くらいに描かれたもののようですが、絵も古いとは思わないし、なにしろ、内容がぜんぜん古くない。
新しい古いってのは、どうでもいいことかもしれません。
が、描かれていることが、思いっきり普遍だなーと感じます。
邪馬台国とか、卑弥呼とか。
そんな時代のお話ですが、ヒトの考えというか浅はかさというかは現代でもまったく同じ。
そして、なんていうのかな〜、それでも生きていこうとする力も現代とまったく同じ。
根本的なところはまったく変わってなくて、それはそれでいいんだって気になります。
いや、未来は戦争はなくなると思いたいし、願っています。
諦めちゃいけないし。
現代とまったく同じと書いたものの、そうじゃないところもあるはず。
そんなことも思います。
いろんなことを思ったりもしますが、とにかく、物語としておもしろい。
それだけでぜんぜんOKです。
すごいなー。
手塚治虫。
30年くらい前に読んでおけばよかったな。
いや、まだまだこれからだけどね。

僕だけがいない街/三部けい

僕だけがいない街
僕だけがいない街 (Amazon)
毎日を懊悩して暮らす青年漫画家の藤沼。ただ彼には、彼にしか起きない特別な症状を持ち合わせていた。それは…時間が巻き戻るということ! この現象、藤沼にもたらすものは輝く未来? それとも…。 (Amazon)
久々に漫画を読みました。
三部けい「僕だけがいない街」です。
まったく前知識ないまま、完結しているのかどうかすらわからないまま、1巻から3巻まで一気に読みました。
サスペンス、になるのかな。
主人公がいまひとつぱっとしないというか、若干、鬱々としているところが、なんか共感。
でもって、物語、展開がすごくおもしろいです。
壮大といえば壮大な展開なので、これからどうやって収束させるのか、収束できるのか。
それによって、ずいぶん、感想が変わっちゃうような気もします。
とはいえ、おもしろいなー。と素直に思うなー。
これからが楽しみです。

海街diary 5 群青/吉田秋生


海街diary 5 群青 (Amazon)
吉田秋生の海街diary 5「群青」を読みました。
よかった。
おもしろかったです。
発売してもう1年近く経っちゃって、ずいぶん寝かせちゃったけど、読んでよかった。
海街diary、どの巻も面白いんですが、今回はひときわおもしろかったような気がします。
重たい話もありますが、どのエピソードもフツウの生活の中であり得るような、リアリティがあります。
それがいいんじゃないかなぁ。
描写が丁寧だし。
淡々と、でもドラマチックで。
我々のフツウの生活でも、実は、そんな日々の繰り返し。
そんな気がします。というか、そんなことを気づかせてくれるような。
なんてことを書いてますが、1巻から4巻までの内容がうろ覚えになっちゃったなー。
1巻発売から、もう5年以上経つみたい。
早いなぁ。
もう一度、最初から再読したい。
そんなことを思ったりもしました。
このお話は映画化してほしいなぁ。
絶対おもしろい映画になると思うな。

感動/齋藤陽道


感動/齋藤陽道(Amazon)
昨日に引き続き、齋藤陽道さんです。
写真集、「感動」。
写真集としては、これしかまだ発売されていないのかな。
いいです。すばらしい。
風景とか、赤ん坊とか、犬とかおばあさん、おじいさん。
その他、被写体はたくさん。
やっぱり何気ない感じの写真が多くて、その何気ない写真が好きです。
何気ないといっても、人の表情がいいんだな。
なんというか、いきいきしてるってのとはちょっと違うような気がする。
とにかく楽しいってのともかなり違うような気がする。
どちらかと言うと、厳しい局面を乗り越えたあとの強さのようなものを感じます。
どちらかと言うと、ですけど。
マイノリティも感じます。
違うかもしれません。
その言葉で括っちゃうのは危険なような気もしますが、とりあえず、マイノリティとしちゃいます。
そのマイノリティであることへの誇りも感じます。
ちょっと違うな。
誇り、じゃなくて、別に大きな違いなんてないんだよと柔らかく言われているような。
そんな感じかな。
それもごくごく自然に。
と、思ったことをツラツラ書いてますが、写真展で感じたキラキラ感はこの写真集にもあります。
例えば、夜景とかのキラキラ感じゃなくて。
  頭の上には ただ空があるだけ
そんな感じ。
すばらしい写真集でした。

白痴/坂口安吾


白痴/坂口安吾(Amazon)
坂口安吾の小説「白痴」を読みました。
これまた短編だし、非常に読みやすかったです。
内容は、Amazonによると、こんな感じ。
昭和初期に活躍した「無頼派」の代表的作家である坂口安吾の小説。初出は「新潮」[1946(昭和21)年]。映画会社に務める伊沢は、豚と家鴨が同居する珍妙な下宿に住んでいる。そのとなりに住む白痴の女が突如部屋に現れたことから、彼の生活が変った。戦時下の異様な時間間隔と、立ち上る身体性をセンセーショナルに描き、文壇だけでなく終戦直後に多くの人から注目を集めた。
面白かった。
面白かったんだけどな。
ちょっと、なんというか、主人公の選民意識のような感じ?がなー。
いや、ホントはそんなことないのかもしれないし、私の読み方がねじ曲がってるのかもしれないけど。
なんとなく、そう感じたまま最後まで読んじゃって。
それでも、最後は、なんかいい感じの終わり方だったかな。
希望というか、主人公のキモちが変わったというか。
そんな風に読みました。
なんだろう、本質に気がついたとでもいうか。
大切なことに気がついたというか。
それと。
東京大空襲の描写がけっこうリアルで。
すっかり忘れてたもんなー。
って、もちろん、体験したことがあるわけじゃないんだけど。
わけも分からず、空襲、なんだよな。
戦争反対、も何もない。
ただただ火の海になるだけ。
ただただ逃げまわるだけ。
なんだよな、庶民は。
思想的なことはほぼ一切書かれてないだけに、逆に、戦争のバカバカしさが伝わってきます。
この小説の本筋じゃないんだろうけど。
という、白痴。
奇妙といえば、奇妙な小説ですが、面白いです。