家族八景/筒井康隆


家族八景/筒井康隆(Amazon)
幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい短編集。
筒井康隆「家族八景」を読みました。
テレパス七瀬を主人公とする三部作の第1作です。
三部作とも、たぶん高校の時に読んだ限り。
ほとんど内容は忘れてました。
これまた衝撃的な小説でした。
「人間心理の深層に容赦なく光を当て」とありますが、まさにその通り。
1975年くらいに発表された小説のようですが、人の心の奥底が題材であることもあってか、まったく古さを感じません。
というか、いま、こういう心をグサグサと突き刺すような小説ってあるのかなー。
SFといえばSFなんでしょう。
にしても、どろどろ感が半端じゃないです。
すべての短編の舞台は、基本的にフツウの一般家庭で生活を営む人々。
その人々の心の奥をグサグサと踏み込み、描き出します。
なんだか頭を掻き毟りたくなるような衝動にかられるような。
一言でいえば、なんて厭らしい、汚らわしいんだ、みたいな。
そんな光景ばかり。
それでも。
多少デフォルメされてるとはいえ、いや、デフォルメされていないかもしれない、これが「人間」なんだよなー。
絶望することはない、主人公の七瀬も苦しみつつも、絶望までは至ってない。
私だったら気が狂いそうな光景ばかりですが、それでも別にいいじゃない、なんとか世界は動いてる。
滅びそうになりつつも、一応、いまのところ、世界は動いてる。
明日になれば、いつものように朝が来る。
なんてことを思わせてくれる小説でした。
ちょっと綺麗に書きすぎたかな。
それでも、このギリギリ感が好きだな〜。
グロテスクで、自己嫌悪に陥ったり世界を否定したくなるような描写が続きますが、ギリギリのところで踏みとどまるみたいな。
これまた、ホントにすごい小説です。

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